2022/10/07 15:24
私が10代を過ごしたところは、禁野(きんや)と呼ばれる土地でした。
特に何があるということもない大阪近郊のベッドタウンでしたが
高校生になったとき、古典の授業で
「昔は天皇が鷹狩りをするという理由で、禁足地とされた土地があった。禁野という地名はその名残りだろう」
と先生から聞いたことは、今も強く印象に残っています。
禁野では狩猟と、薬草の採集が行われていたそうです。
中に入れる人を制限したのには、きっと他にも重大な理由があったに違いありません。
その真の目的は、貴重な土壌菌を護るためだったらしい…という説を私は個人的に支持しています。
天皇家のお膝元であった近畿には、そういう土地がいくつもありました。
昨今は人間と野生動物の棲み分けが難しくなり、互いに相手の領域を侵すことによるトラブルが絶えませんが
先にその禁を犯したのは、私たち人間の側であることは紛れもないと思われます。
野性が機能しなくなった人間たちは「ここから先は立ち入ってはいけない」という本能的なブレーキも効かなくなりました。
野性とは、調和する力。
他の種と協調して、自然界を守る力のことだと私は定義しています。
秘境に憧れ、誰も見たことのない景色を見たい、特別な体験をしたいという人間の欲望は
地球上の菌のバランスを大きく狂わせてきたことでしょう。
この2年あまり、世界中で足止めを食らっていた人間たち。果たしてその間に、大事なことを思い出せたのでしょうか。
白 -haku-